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dAf 105

COYE Noël (ed.)
Lascaux et la conservation en milieu souterrain =
Lascaux and preservation issues in subterranean environments
Actes du symposium international (Paris, 26 et 27 février 2009)
Proceedings of the International Symposium (Paris 26 and 27 february 2009)

フランス文化・通信省の提案で開催された「ラスコー洞窟と地下環境における保護」シンポジウムは、1979年からユネスコの世界遺産として登録されている遺産の保護に対して、フランス政府の強いコミットメントを表明している。本シンポジウムの目的は、2001年の気候上の危機以降、ラスコー洞窟で行われた研究と活動を発表し、国際社会の専門家の見解を得ることである。ラスコーで行われた調査結果は、他国の類似した遺跡や建造物に適用された解決策と比較されるであろう。それゆえ、議論は非常に重要な役割を持ち、包括的な保護に活用されるであろう。これによって、装飾壁画を有する遺跡の保存と管理の規定、修復技術や倫理規定の定義に貢献できると期待される。

 

1940年9月に発見されたラスコー洞窟は同年から歴史的建造物として指定され保護されている。そして、1948年、後に重大かつ長期的に生物気候上の平衡を不安定にする大規模な改修後、一般公開される。しかし、白色病と緑色病という重大な環境障害が発生したため、一般公開は1963年に中止された。表面上は正常に戻ったように見えた1976年から2001年であったが、白かびという新たな危機が発生し、2007年には、黒斑点という更なる危機が発生した。洞窟保護の歴史のそれぞれの段階において、フランス政府は、最善の保護措置を取るため、科学的専門家を招集した(第一章)。
2001年の危機の後、マルク・ゴチエ氏の指揮のもと、ラスコー洞窟科学委員会は設立された。委員会の使命は次の三つである。1)洞窟の状態を完全に把握すること、2)認められた異変に対して打開策を提案すること、3)洞窟を適切な状態に保つ為の、長期的な保護の手順を展開させること。委員会は洞窟の機能を理解し、安定した状態を継続するために必要な科学的研究を調整した。委員会の研究と活動の結果は、2004年に採択された包括的保全計画の主な要素であるラスコー洞窟がある丘の「聖域化」となる(第二章)。

発表の後、専門家と参加者は1947年から2001年まで洞窟の中で相次いで設置された空調設備と科学委員会の機能について討議した(第三章)。

 

ラスコー洞窟は、地下の浅い層に位置し、容積が小さく、高い二酸化炭素濃度のため、非常にもろい。それゆえ、2003年から行われた、洞窟があるカルスト形成システムの機能についての研究は、洞窟内での気候変化を理解するために非常に重要である(第四章)。結果的に洞窟を閉鎖した地滑り、臨時的な地下水の役割、一般開放するにあたって行った変更、空調設備の相次ぐ導入などは、洞窟内の気候変化と1963年と2001年に明らかになった問題を理解する上で、十分に考慮する必要がある要素である(第五章)。近年では、ラスコーのシミュレーターのおかげで、洞窟内気候の機能のモデリングが出来るようになった。防止保全のツールを使用することによって、内部環境を変化させる様々な自然的、人為的要因、空調設備にともなう様々な変化の可能性、人間の存在の影響や、洞窟内の改修の可能性など、洞窟の中の気候の変化を測定することが出来るようになった(第六章)。地下の浅い層、カルスト地形の組織、洞窟壁画の劣化、1977年に閉鎖されるまでの膨大な入場者数など類似した特性のあるアルタミラ洞窟では、1993年から気候学的、水質学的、微生物学的な研究が行われている。洞窟の完全閉鎖と、周辺環境の保護は、この洞窟の保護システムの基礎となった(第七章)。

発表に引き続き、気候平衡の観念と、ラスコーシミュレーターで集められたデータの意味することについて、さらに表面上の気候調節機械の取替えの役割、近年の問題の発生について討議された(第八章)。

 

微生物学は、ラスコー洞窟の保全に関して2番目に重要なアプローチである。長期的には、洞窟内の微生物的の自然生態環境の理解を目的とした根本的な研究からなる。短期的には、危機に面したときに絶対必要な、効果的で無害な処置法をめざす。歴史的建造物研究所は、2001年の感染(Fusariumsolani、
Glyomastix、Pseudomonasfluorescens)と2007年の感染(Ulocladium、Scolecobasidium、Verticillium)の原因を追究し、さらに、科学委員会と共に、適切な処置方法を探した(第九章)。2001年の感染の際、ラスコー洞窟の普遍的な原住の微生物についての資料は存在しなかったので、形態学と分子基準に基づいた微生物の識別が必要であった。その結果、非常に多様な属と種があることが分かった。さらに最近では、微生物群集の構造の進化は、微細気候の研究と関係づけられた(第十章)。高松塚とキトラ塚の例は、ラスコーと似ている特有な感染の特有な対処法を提示している。この問題が、高湿度、気温、工事による環境変化などの理由によって起きたと認められると、石室内での処置が試みられた。しかし、問題が長引いたので、状況をコントロールできる場所で解体し、さらに再構築するという方法が用いられた(第十一章)。

発表に引き続き、生物を同定するため用いられた技術、そして発見された生物の種類について注意深く議論された。そして、特に2001年と2007年の危機に関連して、洞窟にもともと存在している微生物種と処置など人為的原因によって増加した可能性のある微生物種との関係、生物的多様性の役割が議論された(第十二章)。

 

この問題は、スペインの北部地方の洞窟を例に、自然的要因および土地利用の競争や観光事業の促進整備など人為的な要因から損なうおそれを議論している。これらの洞窟の機能を理解できるような保全措置と研究が必要である。そして、それらは、関係各者の協力をもとに、遺跡を保護するという、地域共同管理の基本理念を元に成り立っている(第十三章)。スペインの例をもとに、洞窟の保護と一般開放の展示方法の適応の関係について議論された。ここでは、国家と地方自治体、そして所有者のより一層の協力が望まれる。特にラスコー洞窟に関しては、現在、深刻な状況であるにもかかわらず、ユネスコの基準によると、危機の状況ではないと専門家は考えている。しかしながら、装飾洞窟は建造物であると同時に自然環境でもあるから、状況は複雑である。よって、研究と保全のための改修は、学術的なアプローチを要求されるのである。それゆえに、文化省は短期的かつ長期的なコミットメントを継続し、完全に透明性を保証する精神で、ラスコー保護に必要な責任を引き受けると国際社会に明言した。

 

閉会の言葉として、シンポジウム議長は、会議成果を述べ、今後の展開を提案した。ラスコー洞窟の保護はフランス国家の重要な優先課題であり、ラスコーの丘の「聖域化」や、独立機関かつ国際的、学術的な団体として新たに設置される科学委員会は、まぎれもなくフランス政府の確固たるコミットメントの証しであると述べた。ラスコー洞窟は、「死の危険」に瀕しているとはされていないが、発表も議論も洞窟が抱えている実質的な問題を明確にした。しかしながら、状況は複雑で困難である。ラスコー洞窟は、ときおり緊急な決定が必要とされる壊れやすい環境下にある。今までの補足的研究も発表された。しかしながら、これらの研究を有効に活用するためには、専門家と収集された無数のデータの管理の関係を改善しなければならない。

そして、ラスコーや他の装飾洞窟の存続を確実にするために、これらの遺跡や周辺環境への人為的活動の影響を可能な限り限定する必要があるだろう。

Traduction / Translation
Céline Bruel
Traductrice, diplômée de l'Institut national des langues et civilisations orientales de Paris (France).
Translator, graduate of the Institut National des Langues et Civilisations Orientales of Paris (France).
Sachiko Haraguchi
Architecte spécialisée en conservation du patrimoine, BA (bachelor of arts) en architecture de la Osaka university of arts (Japon), titulaire d'un MSc (master in science) en conservation architecturale de l' Edinburgh college of art (Grande-Bretagne).
Architect specialized in cultural heritage conservation, BA (Bachelor of Arts) in Architecture from the Osaka University of Arts (Japan), MSc (Master degree in Science) in Architectural Conservation from the Edinburgh College of Art (UK).

Révision / Revision
Takeshi Ishizaki

 


 

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